壊された家


2020年、私たちの日常は壊された。

 

今までそこにあったはずのものが無くなって、なかったはずのものがいつのまにか私たちの日常に居座っている。

 

世の中には意味のわからない怖さ、面白さというものがある。

例えば、自分の部屋に入ったら知らない家具が増えていたとか本棚にあったはずの本が全て消えていたという場合である。

人はそういった光景を目の当たりにした瞬間、まずなぜそうなったのか理由を探す。

しかし、それがあまりにも自分の理解を超えていることだとその非日常の 空間に恐怖や面白さを感じるのである。

 

 

2020年、私たちの日常は壊された。

私たちはマスクの軍団となり、モニターと会話する機会が増え、対面時にはビニ ール越しでコミュニケーションを取るようになった。

今までそこにあったはずのものが無くなって、なかったはずのものがいつのまにか私たちの日常に居座っている。

それが私の目には、不気味で怖く、そしてシュールに写った。

 

 

そして私もその影響を受け、家で過ごす時間が多くなった。

家の中は、外と比べると日常で溢れていた。

そこで私は、この目の前の日常を壊すことで外の世界と同じような面白いものが出来上がるのではないかと思い、制作を始めた。

 

 

私は被写体を日常で使うものに限定し、閉塞感を表現するため、自分の部屋で撮影を行った。さらに日用品が意味を持たない状態を作るためになるべく自分の意識を介入させず、日用品の既成概念を壊すイメージで被写体を配置した。

意味を失った日用品たちは、どこか不気味で怖く、シュールなビジュアルとしてそこに存在していた。