この作品は、作者である私自身の記憶に基づいて作られた思い出の遺影である。

 

 

 


 

 2019.12.28  荒川河川敷にて



以前、まだ存命の祖母の遺影制作をしたことがある。

祖母なりの終活を早めに支度していたのだろう。祖母は写真館で新しく撮るのではなく、過去の写真を編集して遺影にしたいと望んだ。

彼女が大好きだった海外旅行先で撮られた数々の写真は、彼女自身、最も美しく、この世に遺しておきたいと考えたものなのだろう。

 

その遺影と向き合ったとき、遺影が持つ魅力に改めて気がついた。

この世に生きた記憶として自分ではない誰かのために、思い出の中の自身を美しく遺したいという思いが一枚の写真に込められている。

 

この作品は、作者である私自身の記憶に基づいて作られた思い出の遺影である。

 

これまで撮りためていた、変わりゆく街の様子を捉えた写真をモノクロに印刷し、

その場所で起こった思い出を瞬間として留めた写真を水溶紙にカラー印刷し、それら二枚の写真を重ねることで、一枚の像に定着させた。

 

 

 

制作過程で偶然的に出来た色の滲みや、紙を溶かしたことによって生まれた独特な像は、思い出が忘却される過程で、曖昧になりゆく記憶を表現している。