祖父のことで思い出すのはどんなことだろう。
新幹線を待つ駅のホームで壁に寄りかかりながらふと、考える。
幼い頃の思い出はかなり色褪せて、
読むことの出来なくなった絵本のような情景しか、
今は思い出すことができないでいる。
あたたかく優しい抱擁のような気持ちだけが、そこにいる。
歳を重ねていくと生活の中で家族を感じる時間が増えてきた気がする。
記憶の中の祖父の姿はずっと同じままで、
僕だけが歳を重ねてぱらぱらと形を変えていく。
祖父にもきっと同じような記憶があって、
ずっと、ゆっくりと自分を形成してきたはずの
僕の知らない祖父のことを僕は知りたくなってしまう。
ゆらゆらとゆられながら、窓の外を見る。
祖父の顔を思い出しながら、流れていく景色は
いつも助手席に座っていた時の
きらきらと輝いていた光たちのように思える。
僕の大好きな祖父を、僕だけの形で残していきたくて。
幼い時は怒られていてばかりで、祖父の優しさに気付くことができずにいた。
じいちゃんの笑顔はファインダーの中ではいつも見る時よりも、
まっすぐで、ずっと、暖かい気持ちで僕を抱いているような気がした。