本作品「 問 」は、写真が本来的に備えてきた「現実の複写性」という側面を、改めて捉え直そうとする試みです。
写真を見るとき、私たちは自然とフレームの内側を”写真として”受け入れてしまいます。しかしこの時、私たちの認識は写真の内側にあるのでしょうか。
この単純なようで掴みどころのない問いが、制作の最初の動機となりました。
あるいは、私が日々写真と向き合う中で、ふと現れる違和感を制作を通して確かめたかったのかもしれません。
窓や鏡、影といった、どこにでもある現象をモチーフにしたのは、それらが光の振る舞いを素直に映し出すからです。
これらは日常的な存在でありながら、像の成り立ちを静かに暴露する装置でもあります。
特に”枠”としてのフレームは、画面の内と外の境界を最も端的に示す要素であり、これを増殖、反復させたり、ときに崩したりすることで、
写真という媒体が成立する臨界点、つまり”閾(いき)”のような状態を探ろうとしました。
完成した像よりも、像が立ち上がりつつあるその途中にこそ、写真の面白さが潜んでいるように思えたからです。
本プロジェクトが目指しているのは、”写っているもの”そのものを主題化することではなく、
写真が像を成立させるその仕組みや、鑑賞の構造に静かに意識を向けることです。
私たちが写真を見るとき、いつも無意識のうちに超えている境界=閾を、いったん立ち止まって感じ直してみること。
そのための手がかりとして、この作品群が機能することを願っています。