小林 陽菜

 

ある日、水槽を眺めていると、メダカが水槽の壁に向かってじっと止まる瞬間があった。ただ泳いでいるというより、何かを見ようとしているようにみえた。

角度を変えながら、様子を見ていると水槽の反射に私の姿や部屋の光がうっすらと重なり、メダカの像が外側と内側の景色のあいだを行き来しているように見えた。

 

調べていくうちに、生き物が虚像にどう反応するかという話にたどりついた。

はっきりした答えがあるわけではないけれど、少なくとも「映るもの」と「そこにいるもの」の境界は思っていたより曖昧らしい。

 

水槽は透明なのに、四方を囲まれた環境だ。

音は鈍くなり、外の気配は濁って届く。

自由に泳いでいるようで、泳ぐ範囲は決まっている。

その様子を見ていると、閉ざされた世界の中で自分が何を感じていたのか、思わず重なってしまう瞬間があった。

 

それでもメダカは、ときどき光の方へすっと向かっていく。

小さな世界の中でも、どこか外へつながる方向があるらしい。

その姿を見て、境界のあいだにある揺らぎや、そこから抜けていこうとする気配を撮りたくなった。