加藤瑠唯 KATO RUI
私の箱庭の原点は、祖父母の家の庭にある。
少し広くて、季節ごとに花が咲き、鳥が集うその場所は、幼い頃からたくさんの時間を過ごした思い出の場所だった。祖父が手入れをして、通りがかりの人が花を褒めてくれるような、暖かい空間。私にとってその庭は幸せの象徴であり、心の中に残る「理想の景色」でもある。
大学進学をきっかけに東京へ出た、けれど、そこに広がっていたのは思い描いていた都会の輝きとは違っていた。どこを見ても似たような灰色の建物が並び、街の中にいても孤独を感じた。結局週の半分は実家に帰っていた。日々を東京と地元の半々で過ごすことで、より景色が色付いて見えた。
この作品では、その理想の世界を写真という形で表現している。現実の景色を記録するだけでなく、自分が感じた空気や光、海、心に浮かんだイメージを通して、自分だけの「箱庭」を作りたいと思った。作品に登場する花は、個人的な記憶と深く結びついている一方で、誰かにとっても特別な存在だと感じた。記念日やお祝い、別れの場面など、花は人の心の節目に寄り添うものでもある。そうした普遍的な優しさや、あたたかさを作品の中に込めたかった。
この箱庭は私自身の理想の世界でありながら、見る人それぞれの中にも懐かしさや安らぎを感じてもらえるような、小さな理想の風景になればと思っている。