めぐる

2019年、森下旅館は店主の高齢化により閉館を余儀なくされた。2歳でスキーを始めてから、毎年冬になると私はここを訪れた。

 

静まり返った部屋から、どこか懐かしい声が聞こえてくる。

ここで知り合った仲間とスキーをしたり、食卓を囲んだかつての温もりを思い出す。

 

私にとってこの地は第二の故郷だ。

あの頃の記憶を包み込む景色が、今も変わらず広がっている。

足早に家へと急ぐ動物たち。大地には長く静かな時間が流れる。

やがて雪が溶け始め、新たな生命が隙間から顔を覗かせる。

柔らかな陽が差し込む。新緑が深まるにつれ、景色は一層色濃くなる。

棚田は黄金色に染まり、植物たちはここぞとばかりにその色を解き放つ。

やがて始まる長い冬を待ち構えるかのように。

波多野 愛美