「飛行機が好きなのか、それとも飛行機写真が好きなのか」

 

よく人からこのような質問を受けることがある。

私の答えはいつもこうで「飛行機への愛があるからこそシャッターを切り、その魅力に取り憑かれているからこそ、最高の瞬間を写真に収めたい」と。

飛行機への情熱は、私の写真撮影における原動力そのもので、その存在があるからこそ、誰よりも追求した一枚を追い求めようと行動するのである。

 

飛行機写真の魅力

 

飛行機写真は、単なる記録ではない。天候や風向き、機体重量によって、飛行する角度や方向が様々に変化する。

晴天であっても、機体と絡めたい景色があっても、狙った方向や角度で飛んでくれず、簡単には撮らせてくれない。

そのような中で好条件が重なり理想の画を撮影できた時の達成感はこの上なく嬉しく、面白さと奥深さがある。

そのような飛行機写真に取り憑かれた私は、飛行機と風景のコラボを極めたいという思いから、全国各地の空港や航路周辺に足を運び、一期一会の一瞬を撮り続けることとなった。

さらに地上から見上げて撮る景色だけではなく、飛行機を空から俯瞰で捉えたいという思いから、空撮という技法にも挑戦をし、道半ばである。

 

「En-route」飛行機人生を映す

 

現在まで飛行機を追い、様々な技法や撮影方法に挑戦し、試行錯誤していく自身の生き方、作品制作の姿勢は、この卒業制作で終わることはない。この先も続けるという覚悟と「飛行機写真人生、道途中」という意味を込めて作品名を「En-route」とした。

航空用語では「航空路」としての意味を持ち、フランス語を語源とするこの言葉は「さあ、出かけよう」という意味も含む。

 

作品への思い

 

私の飛行機写真撮影の一日は、始発から最終便まで時間と体調が許される限り撮り続けるスタイルで、時には深夜に及ぶこともある。

 

このような日々を重ねるうちに、飛行機にも航空路という道があり、行き先によって定められた経路で飛行するものの、機種や操縦の違いによる旋回半径の差が目に留まるようになる。

暗闇の空を飛行する機体から放たれるライトを眺めているうちに、光り方の違いで機種の見分けが着くようになる。

だが、その閃光は一瞬にして消え去ってしまう。ならば飛行機を直接写さず、光の軌跡だけに頼り、目には見えない航空路や行き先、機種を可視化してみよう。そう、写真に航空路を収めようと考えたのが、この撮影のきっかけだ。

すると自然に光の軌跡から「時間と移動」という要素が見え、人々が空の上で繰り広げる無数の脚本や心情までもが思い描けるようになった。

 

さらに、普段見る事の無い裏側の視点にも迫りたいと思い、深夜の光の陰に照らし出されたスタッフ達の姿、コックピット内でのシーンなどを撮影し、空の安全を支えるスタッフ達の見えない努力と使命という感情を可視化しようと試みた。

 

私の可視化することへの挑戦はそれだけに留まらず、念願だったナイト空撮に挑んだ。

十月の台風や悪天候に悩まされ、何度か頓挫し、心が折れかけたが、ようやく好条件に恵まれ撮影に臨むことができた。

上空から空港ターミナル、移動する機体などを捉えることで、絶え間ない人々の動き、空港へと続く交通の流れ、そして目まぐるしく発展し続ける巨大空港の息吹を捉え、無数のライトによって浮かび上がる夜景美と機能美が、それぞれ異なる役割を果たしながらも、一体となって創り出していることを可視化した。

 

空の世界に隠された存在と非日常的な光景や発見という、レンズの向こうにある未知なるモノに尽きせぬ空への思いを乗せて。