山に太鼓の音が響き、馬役の男性と、手綱を握る女性が息を合わせる。
「ラッセラー」の掛け声とともに馬役は一心不乱に跳ね回り、紅白の手綱が引かれる。
津軽半島の北端、今別町で受け継がれる 『荒馬(あらま)』は、青森の短い夏を凝縮したかのような、激しい祭りだ。
青森には母方の実家があり、幼少期から年に何度も訪れている。
夕暮れ時、お囃子の練習の音が運んでくる高揚感、祭りの狂騒、そして夏の終わりへ向かっていく一抹の寂しさ。
青森の祭りには、言い知れない情緒がある。
小学三年生の冬、初めて津軽半島の北端に足を踏み入れた。
体が吹き飛ばされるような風、波立つ津軽海峡、吹き付ける地吹雪、その中で営まれている生活に敬意を抱いた。
そんな町で行われる祭りは一体どんな煌めきを放つのだろうか。
今別の夏を少しでも伝えることができれば幸いだ。