私は、海を見るたびに思い出すだろう。多くの尊い命を奪ったことを。
2011年3月11 日14時46分 東日本大震災が発生。当時、私は小学2年生だった。大きな地鳴りと
ともに揺れる地面。落下してきた時計が割れる音。雪が降り、寒さに耐えながら小学校で家族の迎
えを待つ。それが、私の覚えていること。
停電で情報がない中過ごした日々。楽しかった思い出などなかった。
震災後に見た南三陸町は、私の楽しかった思い出をかき消すかのように茶色の世界になっていた。
大学生活のため、宮城県から東京に来た 4 年間。
帰省する度に、13歳離れた妹を撮影していた。震災後に生まれた妹。震災の怖さなど、わからない。
ある日、隣町の南三陸町を訪れた。震災復興祈念公園には、「いま碧き海に祈る 愛するあなた安ら
かになれと」刻まれた碑。言葉にならない感情になった。
カメラを向けるたびに感じる罪悪感と伝えないといけない使命感。妹にカメラを向けると笑顔を振
り撒く姿。震災当時の私は、こんなにも純粋で幼かったことを知った。
地元には頻繁に戻っているが、久しぶりに南三陸町を訪れた。新しく、南三陸 311 メモリアルがオ
ープンしていた。前回訪れた時にはなかった施設。斬新なデザインの建築に驚きもあった。南三陸
さんさん商店街で軽食を買い、荒島パークという公園に向かう。
無邪気に貝拾いをして遊ぶ妹。階段に座り海を眺める私。
あれから13年経った海は、ただ綺麗な海ではない。
私が見ている海は、あの頃見ていた青い海ではなく、グレーの海に変わっていた。