Shape
「水が不味い」
地元群馬から上京して、最初に水道水を飲んだ時そう思った。
今まで地元で飲んできた水は美味しかったのだとそこで初めて気付いた。
どのような水を飲んでいたのか。私の体を作り出してきた水が自然の中を流れる姿を無性に見たくなった。
強風の湖。
カメラを構える人は多くいるが、この美しさを見つけたのは私だけだろう。誰も目を向けないところにも美しさは存在する。
山に入る。
鳥の鳴き声すらしない静まり返った森に木霊する滝の音。
吸い込まれてしまいそうな自然の力に恐怖を感じながらカメラを向ける。
険しい岩場の沢。
積もった雪が徐々に溶け出し、ゴツゴツとした岩の隙間を流れる。隙間から覗く水はキラキラと宝石のようである。
引いて見ればただの水である。
しかし一歩踏み込むことで肉眼ではわからない、レンズを通して初めて見える水の姿がそこにはあった。
一瞬が生み出す形、時間が創り出す色。まるで別世界のようなその美しさに引き込まれてしまう。
コップに入れてしまえば不変的な水も、自然の中では命があるように姿を変えている。
私はその命の姿をカメラとともに探し続ける。