彼方(あなた)の白いスカート
LI KINSANG
この作品は、隔離一ヶ月の幻想話だ。
コロナ禍の三年間、僕は恋人に会うため、中国と日本を往復し続けている。
2020年、中国では日本の生活をよく夢見た。
練馬高野台駅の辺り、住んでいる家、よく通うスーパー向かいのカフェ。
2021年、日本に戻ると中国にいた頃の夢を見た。
彼女の実家の川、白いスカートを着た彼女の姿、僕の実家のあたりのこと。
そして起きた瞬間、僕にとっては、現実は悪夢のようで、
夢こそ本来にある生活だと願った。
二つの国の空が断絶して以来、
簡単に日中往復するのは夢の中でだけ叶えることができる。
ジメジメな雨、静かな湖、やんわりな波音。
僕は一人で梅雨の街を散歩するのが好きだ。
その発散した水分は僕の体に滲み、心も落ち着く。
水を媒体として、梅雨を通って、海に渡って、川辺の白いスカートまで、
僕の想いを伝えたい。