地はとこしえに変わらない

作品解時代は激しく変動し、世界は常に変化する。私たちの生活も新型コロナウイルスによって一変した。

大きな変化は先を見えにくくし、進む方向を見失いやすくする。このようななかで、数千年という時を越えて、伝えられてきた〈もの〉がある。

 

私が立つここには、あの頃と変わらないものが宿り、わたしたちの営みと共にある。あの世この世の通路のようなものがあって繋がっている

時が巡っても、目には見えない、耳には聞こえない、手には触れることができない、言葉では語れないものが存在し、それが人と人を結び付けている。

 

過去の人々が同じように何かを思い、創り、存在したことを想像することで、自分達も今存在していることを実感する。

ここには「永遠」の欠片が集まっている。

本作品には30ヵ所の古墳が撮影されている。

これらの古墳は約3世紀半ば~7世紀半ばまでの古墳時代に建てられている。鎮魂文化の中で祈りのかたちとして生まれた。

それらは時代と共に遺跡、資料館、里山、神社、お寺の墓地、公園、家の庭などとして、古代から現代にいたるまで伝えられてきた。

 

私はある朝、犬の散歩中に古墳を見つけた。その場所で不思議な感覚を抱いたことが、この作品をきっかけになった。

 

文化人類学者の中沢新一が、「聖地(生き物たちにとって特別な場所)は、サピエンス=知性が発動する。精神の極めて深い場所にわき起こる感覚に繋がっている」と述べている。私にとってまさに古墳が聖地のようである。あの不思議な感覚は、古墳(聖地)を介して、精神の極めて深い場所にリンクしているように思う。この感覚は、私に拠り所励ましをもたらしてくれている。そして古墳を訪れる人々に何気ない触れ合いを与えてくれる。

 

現代は先が見えにくく、自分の進む方向を見失いやすい時代であるけれど、進むしかない。時は止まってくれないのだから。

不安を抱え辛いことも多くあるだろう。しかし安らぎも幸福も訪れるだろう。

未来へと、一歩一歩、踏みしめて歩む巡礼の旅は続いていく。

参考文献

作品題名は『聖書』「コヘレトの言葉」(聖書協会共同訳、日本聖書協会、2018年)から引用。

但し英訳は異なる。

中沢新一『アースダイバー神社編』講談社 2021年