不甲斐なし

「コンプレックスは広義においての一種の劣等性を示す。──このことに対して私は、コンプレックスをもつことは必ずしも劣等性を意味するものではないとただちにつけ加えることによって、限定を加えなければならない。コンプレックスをもつことは、何か両立しがたい、同化されていない、葛藤をおこすものが存在していることを意味しているだけである。──多分それは障害であろう。しかしそれは偉大な努力を刺激するものであり、そして、多分新しい仕事を遂行する可能性のいとぐちでもあろう」(河合隼雄著 『コンプレックス』岩波新書)

誰もが、自分の意志とは異なり、ある捨て去りたい感情を抱いている。そうした感情の一つであるコンプレックスを写真に捉えることによって、不安定で不完全な気持ちの在り様を視覚化した。しかし、コンプレックスは否定的に捉えるばかりではなく、人間にとってプラスに働く作用もある。私たちは、そうした複雑な感情をどのように受け止めていけるのか、作品を通して問いかけた。