Twist

今から数年前、私の家のすぐ近くに大型のショッピングモールが建設されるとの噂を耳に挟んだ私は、街がより賑わい買い物も便利になると喜んでいた。しかし実際に建設が始まると、私は落胆することとなった。いつも部屋の窓から眺めていた山々が、建物に阻まれ見えなくなってしまったのだ。さらに地元の商店街も徐々に活気が失われ、今ではシャッターで締め切られた店が数多く見られるようになっている。

 

変化があったのは私の街だけではない。私が大学1年生の時に当たり前のように通っていた店の数々も、対面授業が再開した頃には全く別の新しい店に変わっていた。コロナ禍で客足が伸びず、閉店せざるを得なかったのだろう。東京では特に店同士の生存競争が激しく、環境の変化に適応できなければ容赦無く淘汰されてしまう。そんな弱肉強食の残酷さ、そして変化とは必ずしも良いことではないということを切に感じた。

 

朝の日差しを浴びながら何気なく山々を眺められる日はもうやって来ない。商店街に並ぶ錆びたシャッターが開くことは二度とない。通学路の景色は瞬く間に移り変わっていく。当たり前が当たり前である期間は、ものすごく短いのだということを思い知らされた。

 

しかし写真としてなら、「今」を断片として残しておくことができる。そう考えた私は東京、その中でも特に変化が早い新宿などの都心部を歩き回り、都市が有機的に動いているかのような様子をカメラに収め続けた。

 

撮影やプリントを繰り返していくうちに、都市は人によって、時間によって様々な表情を見せてくれるのだということに気付かされた。都市をただコンクリートに囲まれた無機質な街だと捉えてしまうのは、非常に勿体無い。生命力に溢れる都市の断片を詰め込んだこの作品が、「もっと色々な一面を見てみたい」とに思わせるようなものになっていれば幸いである。