食卓で綴るラブレター
大学生になってから一人暮らしを始めて気がついたことがある。着た洋服は勝手には綺麗にならないし、部屋もひとりでに片付くことはない。何よりも何もしなくても温かいご飯が出てくることはないしご飯を作るのってとっても面倒だと気がついたことが大きかった。
これまで実家にいたときはご飯を残したりこっそり捨てたりしたことも何度もある。
流行り病で実家に簡単に帰省できなくなったときに。久しぶりに実家に帰った時の食卓に並ぶご馳走に。東京に戻るときに持たせてくれる冷凍されたたくさんのおかずやお弁当に。気づかせてもらった。
母の作るたくさんのご飯たちは、今まで気がつかなかった、母からの食卓で綴られたラブレターだったってこと。
このことに気がついたときに自分が今まで行ってきた行為に酷く後悔した。
自分たち家族の中心にはいつも白いテーブルがあった。
母が父と結婚する前から29年間、家族の形が変わっても静かに家族の中にあり続けた。
この白いテーブルの上で綴られ続ける母からのをもう二度と取りこぼさないように残しておきたいと思った。
竹中彩貴