Art Therapy with Photograph

 

斉藤彩華  Saito Ayaka

写 真 か ら の ア ート セ ラ ピ ー 、自 分 自 身 と 出 会 い 直 す 旅 。

無許可で写真を撮ったことによるトラブルを見かけたことがある。
この景色はいったい誰のものなのか...
ここに存在する何かに撮影許可が必要かもしれない...
こんな不安が私を襲ってから、写真を撮ることが怖くなった。
写真を撮ると、フラストレーションが溜まっていくのを感じた。
シャッターが押せなくなった。
私は、小さい時から絵を描くことが好きだった。
中学では美術部に所属し、高校はデザイン・絵画科に通い......。
これまで撮影した写真をなぞって、絵を描いてみよう。
これまで撮影した写真を模写して、絵を描いてみよう。
これまで撮影した写真の上に絵の具をのせてみよう。
写真が正確に写し出している光、線、色、全ての要素を、絵を描くために選択する。
どんなに無意識的な行為のなかにも、私は何かを選び、何かを選んでいない。
写真によって見失ったものと、写真によって蘇ってきたもの。
写真の上に描くことは、私に気づきを与えてくれる。
写真を見ることと写真の上に描くことを通して、心の奥底に潜む「わたし」に出会っていく。

 

アートセラピーを通して、自分の気持ちと心の状態を捉え直すように試みた。
なぜ写真が撮れなくなってしまったのか。
自分のせいだと責めていた。
写真が嫌いになったからだと思っていた。
ある日、ある光景を思い出した。私はすっと心が軽くなるのを感じた。
自分自身を「ゆるす」ことができるようになった。
ハナショウブの写真を模写した時、高校の時の水彩画の授業の記憶が蘇ってきた。
静物写真が好きだったことを思い出した。
部屋の中で撮影すると、
身近なものを撮影することが得意だと感じるようになった。
この作品では、時間の経過と自己の変化を見つめていくことから、
傷ついたり弱ったりする頑な心を開いていく自らの経験を記録していった。